自己資金は住宅の「頭金」と「諸費用」にあてるのが一般的です。このうち、頭金をどれくらい用意すれば良いのでしょうか。今は「頭金なしでも買える」というセールストークもありますが、これを鵜呑みにしてはいけません。
頭金はある程度用意しておいたほうが賢明です。いえ、十分な頭金がないのならば、住宅は買わないほうが良いでしょう。なぜなら、ローンの優遇条件を受けるには、頭金を1~2割入れることを挙げられているケースが多くあるからです。また、頭金なしで借入額が大きいと、売却する際、売却価格よりローン残高が多く残ってしまい、家を売ることができないリスクが生じてしまうからです。頭金は住宅価格の2割、諸費用を含めて自己資金3割を目安に準備するべきでしょう。
マイホームを買いたいと思ったら、まずは家中のお金をかき集めてどれくらいの頭金を出せるのかを計算しましょう。この時、貯蓄の全部を頭金に回してしまう人がいるのですが、それでは新居に移ったときに生活がギリギリになってしまいます。新生活は何かと出費も多いので、最低でも生活費の3ヵ月分(60万円くらい)は貯蓄として確保したいところです。
ここで、よくいわれる「頭金は2割」の根拠ですが、少し前までは一般的な融資額の限度が物件価格の8割であったとか、住居費は「月収の25%以内」との計算からきているものです。現実として頭金2割は大変ですが、これらの目安は身の丈より高い物件を買って家計が苦しくならないよう、無理な返済計画を立ててはならないという教えなのです。
マイホームを購入した先輩たちは10~30%程度の自己資金を用意しているわけですが、これから購入する人はできるだけ20%以上の自己資金を用意すべきです。もちろん、自己資金は多ければ多いにこしたことはありません。それだけ返済計画がラクになります。最低でも自己資金は20%以上、できれば30%、40%と用意してゆとりのある資金計画を立てたいものです。
4000万円の住宅を購入するとき、自己資金ゼロだと、毎月の返済額は13万円台になりますが、20%用意すれば10万円台に減らすことができます。さらに30%なら9万円台で、40%準備できればなんと8万円を切るのです。その結果、総返済額には格段の差が出てきます。自己資金ゼロだと、総返済額は約5565万円ですが、20%の場合には約4452万円ですみます。その差は1113万円となるのです。自己資金20%だと、当初に800万円を出しているわけですから、それを差し引いても約331万円も負担が軽減されるわけです。さらに、自己資金30%になると、総返済額は約3896万円となります。自己資金ゼロに比べると約1670万円の差にあるのです。当初の自己資金1200万円を引いても、実に約480万円もトクできる計算です。この差は金利が高くなるほど、返済期間が長くなるほど大きくなります。一般的に30年、35年といった超長期の返済期問を利用する人が多いと思います。それだけ自己資金を増やす効果が大きくなるので、ぜひとも注目しておきたい点です。
自己資金がある程度必要なのは理解できるのですが、ある程度年収の高い人で、いま買わないと当分買いたい物件が出てこないかもしれないといった事情のある人なら、自己資金が十分ではなくても、買えるうちに買っておくのがいいかもしれません。住宅価格については比較的落ち着いた動きが予想されますが、金利はいずれ上がる可能性があるので、買いたい物件があって、買える環境にあるのなら、そのときがチャンスと考えていいでしょう。
たとえば、4000万円の新築マンションを買いたいけれど、自己資金が購入価格4000万円の10%、400万円しかないという場合、毎月の返済額は12万円近くとなり、年間返済額は約135万円となります。返済負担率は25%までに収めるのが安心ですから、その範囲内にするには、582万円ほどの年収が必要になります。582万円に達しない人は、もう少し自己資金を増やす努力をしたほうがいいでしょうが、82万円以上の人だと、自己資金20%という鉄則にとらわれずに踏み切るのも勇気ある決断かもしれません。
自己資金20%以上が鉄則とはいっても、それは年収や返済負担率などの条件にもよるわけです。年収1000万円を超えている人であれば、自己資金ゼロでもほぼ問題ないでしょう。年間返済額は約159万円ですから返済負担率は15.9%以下にとどまります。通常の家計管理ができている世帯であれば、むしろかなり余裕を持って返済できるレベルといえるのではないでしょうか。ただし、自己資金が少ないと金融機関の審査は厳しくなります。家計をシッカリ管理して、計画的に預貯金を増やしているかどうかも、審査の重要な要素ですから、自己資金ゼロの人は、その点に不安が残ります。事前に金融機関に融資可能かどうかを確認しておいたほうがいいでしょう。
住宅資金の贈与税は1000万円(1500万円)まで非課税親からの資金援助では、年110万円の贈与までは課税もされず申告も不要です。また住宅資金として父母や祖父母から贈与を受ける場合となります。平成31年度入居では一般住宅は1000万円、省エネルギーや耐震・免振などの基準を満たした住宅は1500万円まで非課税になります
相続時精算課税制度なら、最大2500万円まで非課税に「相続時精算課税制度」は贈与の分を相続時に相続財産と合算して計算する制度です。対象は60歳以上の親から20歳以上の子が贈与を受ける場合で、非課税枠の金額は2500万円までとなっています。住宅取得金等の贈与税の非課税枠と併用すると、平成31年度は最大4000万円まで税金がかかりません。
相続時精算金銭制度は、相続時に贈与した財産を相続財産に加算する制度である。 贈与税は2500万円まで非現金であり、2500万円を超える部分には20%の税金がかかる。精算現金制度を利用すると、贈与した財産がなくなった時にまた相続税が計算される。 この制度を使うと、贈与税の特例制度を利用できなくなる。や大きな贈り物をしたい人にとって有利な場合がある。
親から資金援助を受けても、返済している事実があれば「借入金」とみなされ、贈与税は発生しません。贈与でないことを証明するためには、一定の金利を設定して借用書を作り、毎月振り込みで返済するなど、返済の実績がわかるようにしておくことがポイントです。
フラット35なら100%まで借りることができる!?
フラット35は以前までは、購入価格に対する住宅ローンの融資割合の限度は80%でした。たとえば、4000万円の住宅であれば、その80%の3200万円までが融資限度額で、残りの20%、800万円については自己資金を用意しなければならなかったのです。しかし、2017年春に90%まで借りることが可能になりました。さらには、民間と住宅金融支援機構が提携したフラット35に関しては100%融資が可能です。ただし、90%超の融資を受ける場合には、金利が若干高くなっているので、90%までに抑えておくのが得策です。それでも自己資金が足りない人は、不足分を民間ローンで補えます。
民間の独自ローンでも90%から100%OKのローンが増えつつあります。100%どころか、借り換えの人については担保評価額の200%まで融資するといったローンもあります。さらに、100%融資した上で、諸費用についても別途ローンを用意している金融機関すらあります。もちろん、これは十分な返済能力がある人に限ってのことです。誰でも90%、100%の融資を利用できるとは限りませんし、できるだけ自己資金を多くして、借入額を少なくするほうが、返済がラクになるのはいうまでもありません。実際、住宅金融支援機構の調査によると、フラット35を利用してマイホームを取得した人の資金構成は以下のようになっています。注文住宅と新築マンションでは手持ち自己資金の割合が20%を超えています。特に首都圏で注文住宅を建てた人だけでみると25%に達しています。反対に価格が比較的安い中古住宅では、自己資金が少なくても住宅ローン利用額はさほど多くはならないこともあって、中古戸建ての自己資金の割合は13.4%、中古マンションは18.6%となっています。
金融機関やローン商品によって、借りることができる金額が違うものです。住宅ローンの借入可能額はさまざまな基準で決まってきます。まず、年間返済額が税込み収入の何%になるかという「返済負担率」が基準の1つとなっています。「フラット35」と財形住宅融資では、年収によって返済負担率が違います。銀行ローンでは、各金融機関がそれぞれの基準で返済負担率の上限を設定しています。
また、ローンの種類によっても上限が決められています。「フラット35」は限度額は8000万円で購入価格の100%以内です。財形住宅融資は財形貯蓄額の10倍以内(4000万円が上限)となっています。銀行ローンは金融機関によって違いますが、価格の100%まで借りられるケースもあります。
このようにして出された融資限度額は、あくまでも貸す側からの基準です。この金額で無理なく返済していければいいのですが、家計の事情はそれぞれ違うものです。家族の人数や子供の教育にかけたい金額などによって、住宅ローンにまわせる金額は違ってきます。自分が返していける金額を基準に検討することも忘れてはいけません。毎月返済していける金額を把握したら、借入可能額を確認してみましょう。
金融機関は借りる人の返済能力を考慮して借入限度額を設定します。ですから、いくら年収が多くても、他にローン返済があると、総返済負担率の審査が行われ借りられる金額 が少なくなる場合もあります。審査基準は、金融機関によって異なります。
自己資金は必要という意見もあります!!
多く自己資金を貯める必要はありませんが、少なくとも頭金は100万円と諸費用分は、用意しておくのがベストです。住宅を購入する際には、物件価格の4〜10%程度の諸費用も必要になります。
ところが、預貯金が1000万円以上あるにもかかわらず、頭金を1円も入れずにフルローンを組む方もいます。「住宅ローン控除で、できるだけ多くの税金の還付を受けたい!!」「金利が低いので、手元に預貯金をなるべく多く置いておきたい!!」というのが彼らの理由です。しかし、客観的に診断すると、結果として不利な条件のローンを組まされており、けっして得策でないなと感じるケースもあります。
借入のための審査では、自己資金比率が非常に重要な判断材料になります。審査に通ったとしても、自己資金の出資比率によって、適応金利が異なることがよくあります。たとえば、今人気の住信SBIネット銀行は、諸費用まで融資を希望する人と諸費用は自己資金で賄う人とで、適用する金利を3段階にわけでいます。さらには、住宅金融公庫のフラット35も自己資金の合によって金利が2種類にわかれますし、返済期間でも適応金利が異なります。
貸し手の金融機関側からすると、「自己資金が少なく返済期間が長い人」は「自己資金が多く返済期間が短い人」よりも、いざというときに資金が回収できなくなるリスクが非常に高いと判断され、そのぶん適応金利が高くなるのです。法人が銀行から事業資金の融資を受ける場合は、その会社の経営状態や財務内容によって金利はまちまちですが、個人の住宅ローンにおいても、金融機関はリスクの度合いによって融資金利を変えているのです。「今は金利がとてつもなく低いし、フルローンを組んでローン控除による節税対策を最大限にしたほうが得ですよ!!」などというアホな営業のセールストークを鵜呑みにせず、シミュレーションで試算してみることがとても重要です。自己資金をどれくらい出すかによって、融資の可否だけでなく、適用金利を何%にするかの判断材料にもされていることを認識しておいてください。
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