住宅の資金計画をどうすればいいのか、ここからは年代別のケーススタディでみていくことにしましょう。年収や家族構成など、その人の置かれている環境によって、チェックポイントはかなり異なってきます。多くのケースを紹介しますので、そのなかには必ずあなたに近い例があるはずです。資金計画づくりの参考にしてください。
住宅の資金計画は人それぞれ業者のいいなりは失敗のもとです。不動産会社、ハウスメーカー、また金融機関に足を運べば、あなたの条件に合わせて資金計画を丁寧に作成してくれます。それは、多くの場合、当面の返済額が最も少なくなる条件を設定して作成しています。できるだけ負担感がないような形で資金計画案を提示して、スムーズに住宅やローンの販売に結びつける必要があるわけですから、営業戦略からすれば当然のことでしょう。 たとえば、返済期間は必ずといっていいほど、35年など最長返済期間で試算されています。その人の年収からすれば、35年でなく、30年とか25年でも、20年でも可能だとしても、35年で計算したほうがゆとりがあるようにみえるからです。
また、毎月の返済額は8万円でも、ボーナス返済が48万円あり、ボーナス月の引落し額は56万円になるといったような例がほとんどです。最近は、ボーナスの支給額が減少傾向にあり、ボーナス返済で行き詰まってしまう大が増えています。ですから、そんな計画を平気ですすめるような業者は、信頼しないほうが無難かもしれません。さらに、金利もいちばん低い住宅ローンを利用した資金計画になっています。そうしたローンは、購入後に金利が上がれば、返済額が3割も5割も増えてしまう可能性があります。半数以上の人が業者や 金融機関のすすめで決めているそのような資金計画をそのまま利用すると、たいへんなことになります。突然返済額が増えて、返済に四苦八苦、やがてはローン破綻、自己破産なんてことにもつながりかねません。
しかし、実際には、ほとんどの人が業者のすすめるままに住宅ローンを決定しています。2018年度に民間住宅ローンを利用した人のうち、利用した住宅ローンを知ったきっかけ、決定に影響した媒体ともに「住宅・販売事業者」がトップで、「金融機関」が3位に、「モデルルーム・住宅展示場」が4位に入っています。「住宅情報誌」「クチコミ」「新聞記事」「住宅情報サイト」など、さまざまなメディアを活用したり、ある程度自分で勉強したうえで決めたという人は少数派にとどまります。それでも、特に問題なく無事に返済していければいいのかもしれませんが、実は、それによって、トクする機会を失っていることも考えられるのです。ある程度年収がある人なら、返済期間を1年でも2年でも短くすれば、毎月返済額は多少増えても、総返済額を少なくできます。それが可能なのにもかかわらず、最長返済期問を利用するというのは、みすみすトクする機会を失い、損をしているといっても過言ではないでしょう。
金利が低い住宅ローンには 低いなりの理由があるのです。それだけならまだしも、途中で返済額が大幅に増えて、返済に行き詰まってしまうといった最悪の事態も想定されます。事前に、金利変動のしくみ、返済額増加の可能性などを理解していれば、それなりの対応策もとれるのでしょうが、業者のいいなりで資金計両を組んでいる人の大半は、残念ながらそうした点の理解が不十分なようです。利用した住宅ローンを選んだ決め手は何かと聞くと、最も多かったのが「金利が低かった」で、次いで「諸費用が安かった」などコスト負担面の要素が上位にあかっています。金利の低いローンはのちに触れるように、かなりのリスクがあるわけですが、実は、その点を理解していない人が少なくありません。変動金利型の各種のリスクについて、「理解しているか不安」「よく理解していない≒まったく理解していない」の合計は3割前後に達しています。将来金利が上がったときに、どれくらい返済額が増えるのかさえ理解していない人もいて、これでは実際にそんな局面がやってきたときに、対応不能になるのは目に見えています。業者や金融機関のいいなりではなく、自分たちにいちばんふさわしい資金計画を立て、返済開始後に想定されるさまざまな事態にも十分な対応策をとっておく必要があります。
上で変動金利型ローンのリスクをご説明しましたが、変動金利のリスクを抑えながらうまく「おトク」を取る活用法があります。それが10年固定金利など異なる金利タイプのローンと組み合わせ、複数のローンを組む「金利ミックス返済」にする方法です。変動金利型ローンは、当初の適応金利は低いものの、金利上昇リスクがあります。そこで、変動金利で借りる分を早期に完済できる額に抑え、残りは10年固定金利にすれば、金利上昇リスクを抑えながら変動金利のメリットも得られるというわけです。「おトク」と「安心」の両方を手に入れられる方法といえます。しかし、一方ではどっちつかずという意見もあります。
金利ミックス返済にする場合、金利タイプごと別々に2本のローンを組む形になる銀行が多く、この場合は印紙代、司法書士報酬などの諸費用が2本分かかるという大きなデメリットがあります。一方で、ローンが2本に分かれていれば返済期間も別々に設定できるので、「変動金利型は15年返済、10年固定は30年返済」といったプランにすることもできるというメリットがあります。銀行によっては金利タイプを複数にしても契約が1本で済む場合もあります。この場合、諸費用は契約1本分でOKですが、返済期間は別々に設定できません。共働き夫婦が二人でローンを組む場合も、金利タイプを組み合わせるといいでしょう。
同じ金利タイプでも 年間30万円近い差が出 る!!
住宅ローンを利用するときには、少しでも金利の低い金融機関を探して、できるだけ負担を軽くしたいと思うのは当然でしょう。金利がわずか0.1%違っただけで、借入額3000万円、35年返済だと総返済額は70万円以上の差になってくるのですから。
最近は金融機関によって金利がかなり異なっているので、自分の目と足を使って、シッカリといちばん有利なローンをみつけるようにしたいものです。さらにいえば、同じ金融機関の同じタイプのローンでも、金利は一様ではありません。変動金利型だと、多くの銀行では店頭表示金利は2.575%ですが、実際には金利引き下げによって1%台前半から、1%以下で利用できるようになっています。提携ローンで最も有利な0.875%だと、店頭表示金利に比べて、年間返済額が30万円近くも少なくなりますから、その影響はきわめて大きいのです。
固定期間選択型も同様です。固定期間選択型2年もの、3年ものの当初期間重視型は、2年後、3年後の返済額増加リスクが大きいため、実施している金融機関は減っていますが、一部の信用金庫などでは当初3年間は1%といったケースも見受けられます。店頭表示金利は3%台ですから、図表11にあるように、当初3年間の返済額では90万円以上の差が出てくるのです。なお、全期間引き下げ型だと2%台前半になりますが、それでも、店頭表示金利と比べれば、当初3年間の返済額は約80万円も少なくなります。
このような金利引き下げの適用を受けるためには、一定の条件を満たしている必要がありますが、その条件は決して難しいものではありません。保証会社の保証が受けられる、団信に加入できる、当該金融機関で給与振込みを利用する、などの条件を満たせばいいのです。銀行系のクレジットカードの所有などが条件になっているところもありますが、申込み前に条件を満たしていなくても、申込み時に満たせばいいので、簡単な手続きで金利引き下げ対象になることができます。その結果、実際に住宅ローンを利用する人の大半が金利引き下げの適用を受けています。このため、公正取引委貝会から、「誰でも優遇を受けられるのでは優遇とはいえない」と指摘され、最近では、「優遇」という表現を使えなくなっているほどです。
金利ミックス返済は「おトク」で「安心」なだけでなく、住宅ローンの使い勝手が高まるというメリットもあるので、利用を検討する価値は大いにある10年固定で2000万円、変動金利型で1000万円と2本のローンを組むとします。繰上げ返済をする際は変動金利型のほうを積極的に返していけば、早期完済で金利上昇リスクの不安から解放されるでしょう。
子どもの教育費がピークになる時期までに変動金利型のほべを完済できると、残りは10年固定の1本のみとなり教育費支出がかさむ時期を乗り切りやすくなります。金利ミックス返済を利用する場合は、変動金利型の借入額を抑えるのがコツです。「安心」と「おトク」の両方を取るとはいえ、「安心」のほうを優先すべきです。変動金利で借りてもいい額は、1000万~1500万円程度が目安です。固定に切り替えず、変動金利のまま10~15年程度で返済できる額にしておきましょう。
「住宅ローンで少しでもトクしたい」と思うと、金利の低さにばかりこだわつてしまいがちなもの。たしかに金利も大切ですが、利息負担を減らすには、返済期間を短くするのが効果的です。返済期間は「30年」「35年」など5年刻みで設定するものだと思っている人が少なくありませんが、1年単位で設定可能ですから、1年でも短くできるようにプランを組みましょう。たとえば、3000万円を金利2.5%で借りる場合、返済期間35年と返済期間30年では、総利息額に237万円も差がつくのです。
もちろん、「老後の安心」にも大きな違いが生まれます。35年返済なら毎月の返済額は10万7248円で、35歳でローンを組んだとすると60歳時点で約1137万円のローン残高が残る計算です。一方、返済期間を30年にすると、毎月の返済額は1万円ちょっとアップしますが、60歳時点の残高は約667万円となるのです。「毎月の返済額を1万円もアップするのは大変」という人でも、4000円くらいならがんばれるのではないでしょうか。すると、返済期間を33年に短縮でき、60歳時点の残高や総利息額も減らすことができます。返済期間を短くすることによって、総利息額と60歳時のローン残高がどのように変わるかを試算したものです。少しがんばって毎月の返済額をアップできれば、返済期間を短縮し、利息を少なく、60歳時のローン残高も小さくできるのです。
モデルルームなどでは、「とひあえず35年で借りておいて、余裕があれば繰上げ返済すればいいんですよ」などとアドバイスされることが多いようです。しかし、繰り上げ返済のためのまとまった資金を貯めるのは口で言うほど簡単ではありません。子どもの教育費や老後に向けた貯蓄もして、そのうえで繰上げ返済用のお金を別に貯めていけるかどうか、冷静に考えてみましょう。実際、繰上げ返済を一度もできていないという人はとても多いのです。できるかどうかわからない繰上げ返済をあてにするより、毎月の返済額をアップすることを考えましょう。返済期間については1年単位で複数パターンを試算し、家計と照らし合わせて、実現可能な返済額をみつけてください。
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本体工事費のほかにさまざまな工事費と諸費用がかかる
家づくりを考えるとき、まずハウスメーカーや工務店で見積もりを出しててもらいますが、このときに示される「坪〇〇円」という金額は、本体工事費だけをさすことがほとんどです。本体工事費に含まれるのは、基礎工事から屋根・内外仕上げまでの建物本体の工事にかかるお金です。実際にはこのほかに、次の費用がか必要です。
・付帯工事費
建物を建てるときに敷地や地盤などで発生する工事の費用。外部設備引き込みや排水諸工事の費用もここに含まれます。
・別途工事費
外構、エアコンなど、建物以外で発注、購入するものの費用です。
・諸費用
申請時にかかるお金や、印紙代、融資手数料、保証料など、ほとんどが現金で用意しなければならない費用です。
・追加工事費
契約したあとで、変更や追加工事があった場合の費用です。
本体工事費以外に、いくらぐらい用意したら良いのでしょうか。付帯工事費は、敷地の形状や道路からの高低差などで大きく変化します。さらに、別途工事費は、自分でどのぐらいプラスするかによりますし、諸費用のうち、引っ越し代などは人によって多少の差があるものです。また、建てかえの場合は、解体費用や仮住まいの賃貸料など、新築よりも出費が多くなることになります。
このように、本体工事費以外にかかるお金は個人差のとても大きいものです。目安として、新築の場合は本体工事費の25%~30%程度、建てかえだと本体工事費の30%~35%程度が、本体工事費以外にかかると考えておいたほうが良いでしょう。
ハウスメーカーや工務店に見積もり書を出してもらったら、本体工事費には何か含まれているのか、別途工事費の範囲はどこからどこまでかを、しっかりと把握してください。場合によっては、必要な工事が別途工事費に入れられていて、見積もりよりも確実に高くなることもあります。
さらに、業者によっては、引っ越し費用をもってくれたり、粗大ゴミを無料で処分してくれたりと、諸費用部分のサービスをしているところもあります。そのほかいろいろなサービスがあります。特に数社に見積もりをお願いしたときは、「坪単位いくら」だけで考えず、諸費用まで含めた総費用で慎重に比較しましょう。最近ではインターネットでハウスメーカーや、工務店の見積もりが取れるサイトがあるので、積極的に利用しましょう。
今住んでいる家を建てかえる場合は、その解体費用も予算に入れなければなりません。資金計画を立てる場合、解体費用としては200~300万円程度考えておくのが一般的です。ただし、木造やRCなどの建物の種類や、敷地の面積などによって異なるので、建物のそばに電線があったり、私道に面していて車が近くまで入れなかったりと手間がかかる場合は、その分高くなります。少し多めに見ておいたほうが良いでしょう。
また、数力所で見積もりをとってもらう際は、その他の条件も詳しく教えてもらいましょう。メーカーによっては、とり壊しのときに不要になった家具などを無料で持っていってくれるなどのサービスを行っているところもありますし、仮住まい中の家賃や敷金・礼金を援助してくれる場合もあります。これらの雑費はばかにならないものですから、単純に解体費用だけで比較せず、最もお得な方法を選んでください。
上記のもの以外に、工事期間中の仮住まいの賃貸料などがかかりますし、引っ越しも旧宅→賃貸→新宅と2回必要となります。さらに仮住まい中に荷物をトランクルームなどに預ける場合は、その費用も考えなければなりません。さらには、解体工事のゴミ処分費がかなりの出費になることもあります。これらはすべて、すぐに支払わなければならないお金なので、自己資金に余裕をもたせた資金計画を立てる必要性があります。
それぞれの工事費ごとの内容は以下のとおりです.本体工事費以外は.物件によっては必要ない項目もあるので注意が必要です。
仮設工事、基礎工事、木工事、屋根工事、金属工事、金属製建具工事、木製建具工事、石・タイルエ事、塗装工事、内装工事、雑工事、諸経費
屋外給排水工事、屋外ガスエ事、屋外電気工事.地盤改良工事、杭工事、運搬費
解体工事、外構工事、植栽、空調工事、照明器具、インテリア一家具関係、水道分担金と工事費
●工事関係の諸費用・・・設計料、確認申請料、工事契約の印紙代、近隣あいさつ、地鎮祭・上棟式費用、職人茶菓子代
●ローンと登記の諸費用・・・印紙代、融資手数料.抵当権設定登記、保証料、団体信用生命保険、火災保険、地震保険
●入居後の登記と税金の諸費用・・・表示登記一所有権保存登記、不動産取引税
●引っ越し・建てかえの諸費用・・・引っ越し代、仮住まいの賃貸料、トランクルーム、ゴミ処分費
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