宅建業の免許番号や加盟団体から、営業規模や年数、資本力を知ることができます。不動産広告の取引態様にある「売主」とは取引される不動産の所有者のことで、分譲住宅の企画から販売までを行う売主には、デベロッパーと呼ばれる大手・中堅の不動産会社や建設会社、鉄道会社、ハウスメーカーや工務店などがあります。いずれにしても宅地建物取引業(不動産会社)を営むには免許が必要です。また、社会的な影響力が大きいので、不動産会社を開業するにあたっては営業保証金を国へ納めなければなりません。
●地元業者か全国規模の会社かを見る
広告にある不動産会社名のそばには、宅建業者の免許番号が『東京都知事(5)第1234号』のように必ず表示されています。1つの都道府県で営業している会社には「都道府県知事」の免許、複数の都道府県で営業している会社には「国土交通大臣」の免許が与えられます。これによって、他都道府県にまたがる会社か、地元の会社かを判断できます。
●会社の営業年数を知る
この免許は5年に一度更新され、番号の( )内数字が1つずつ増えていきます。よって、この数字が大きいほど長年にわたり営業しているという見方ができます。ただし、古くからある大きな会社が分社化した場合など、数字は(1)になりますが、実績やノウハウは豊富ということも。逆に、数字が大きくても休眠状態の会社だったり、旧態依然として営業マンの質が悪いということもあります。
●資力のない会社は連帯保証で
広告の不動産会社名の近くには、加盟業界団体名も示され、会社の規模や広告の自主規制への対応が判断できます。不動産業を開業するには、宅建業法で義務化されている営業保証金1000万円を法務局へ供託しなければなりません。しかし「全国宅地建物取引業協会連合会」や「全日本不動産協会」に入会することによって、この供託金は弁済業務保証金分担金という連帯保証の形で60万円ほどで済みます。加盟には資格審査があり、入会後も研修会などを行っています。
●広告に対する自主規制
独自に1000万円の保証金を支払える資本力のある会社は「全国住宅産業協会」、「不動産流通経営協会」、「不動産協会」などの団体に加盟しています。一般に大手の会社ほど信用を大事にする傾向があるので、その加盟団体が行う広告の自主規制なども厳しいといえます。また、「不動産公正取引協議会」に加盟しているかどうかも信用度を量る目安です。
宅建業者の免許番号がわかれば、免許を交付した行政庁で業者名簿を閲覧することができ、過去の営業実績や資産状況、行政処分歴などをチェックすることができます。役所の中には、専門の相談員を配置しているところもあります。名簿を閲覧しに行くことは決してむだではありませんが、業者選びで大事なことは、やはり現物の住宅と営業マンです。信用できる業者だと思ったら、予算や希望を明確に伝え、信頼関係を確立していくのがよい住まいを手に入れるコツです。
大手デベロッパーは株価をチェック。大手ハウスメーカーであっても安心は禁物です。
●メリット
大手のデベロッパーが行う大規模な住宅開発はニュータウンと呼ばれ、整った街並みや環境が魅力です。
●デメリット
しかし、インフラ整備から始めて10年以上かけて開発するケースもあり、完成するまでの会社の経営状態が心配されます。よって、株価が低迷しているデベロッパーは避けたほうが無難。最新の経営状態は、上場企業なら『会社四季報』やインターネットの「東洋経済オンライン」で概要を知ることができます。また、倒産するパターンとして、相場より明らかに価格が安がったり、簡単に値引きに応じたりする会社は要注意。倒産を避けるために利益を度外視して販売している恐れがあります。これはハウスメーカーや工務店にも言えることです。
●メリット
「○○ホーム」や「○○ハウス」などの注文住宅を中心としたハウスメーカーも建売住宅を分譲しています。大手の八ウスメーカーは、資本力・技術力・設計力など総合的な信頼性が高く、資金計画や税金対策などのノウハウも持ちあわせています。自社の中古住宅を高く売るためのシステムを持っている会社なら買い換えも有利です。
●デメリット
短所としては、住宅そのものは工場生産で規格化されていても、実際に施工するのは下請けの業者なので、それぞれの家の出来栄えにはバラつきが出てきます。商品開発競争が激しい業界なので、最新の工法をアピールしている会社なら、よりいっそう下請け職人の習熟度や建築現場の監理体制がしっかりしているかが重要になります。さらに、販売・施工・アフターサービスなどの各過程で担当部門が異なるので、誰が責任者なのかを確認しておくことが大切です。アフターサービスは20年など長期保証がふつうになっていますので、その内容がしっかりしているかが大事です。
ハウスメーカーは注文住宅の受注用に住宅展示場に自社の建物を展示してあり、いつでも自由に見学することができます。しかし、この展示場のモデルハウスは、建坪が大きく別途費用のかかるオプションがたくさん使われていて豪華なのがふつう。住宅そのものの良しあしを見極めるのは、どうしても難しくなります。同じメーカーであっても、建売住宅の購入時にはほとんど参考になりません。それより、現地で実際は施工されたモデルハウスを数多く見るほうが現実的です。現地では周囲の環境などを含めて、具体的な検討を開始することもできます。
売主と開発規模 | 特徴 |
大手デベロッパー・大手不動産会社 | 郊外エリア中心で、1区画の面積が広い。ニュータウンと呼ばれる大規模開発が主。10年以上かけて開発する、整つだ街並みや環境が特徴。 |
ハウスメーカー | 都心隣接~郊外エリア。注文建築を中心とするハウスメーカーだが、分譲もする。周辺同程度物件より少し高めになる。パワービルダーは地元密着型で低価格の分譲住宅を供給している。 |
工務店 | 数戸の小規模開発既存住宅地の中に1、2棟を建てる場合が多い。狭小地の3階建て住宅も多い。 |
規模が小さくても地元に根づいた工務店なら心配は少ない。パワービルダーは中堅工務店のことです。
●開発費が低い分譲地を売る
マンションなどと違い、小規模の分譲住宅は開発費が低く、木造であるなどの理由で、地元の小さな工務店や不動産会社が売主になるヶ-スがかなり多くあります。また、大都市圏では「○○住宅」「○○産業」という中堅工務店の建売住宅が急激に目立ちはじめ、これらは「パワービルダー」と呼ばれています。
●工務店より価格が安いパワービルダー
工務店の建売住宅は、価格が割安に設定されているのが魅力ですが、パワービルダーは資材の一括発注や資本回転を早めるなどして、さらに価格を安く設定しています。しかし、いくら安くても造りが粗悪ではいただけません。施工中の建築現場を見たり、購入した人の評価を聞いたりしましょう。小さな工務店の場合は、地元で多くの分譲実績をもっ会社を選ぶのが基本。心配ならば、最寄りの役所で建設業者の名簿を閲覧して経営状況などを確認するとよいでしょう。
建築現場を見ると、工事の進め方や監理状況がある程度わかります。現場見学を拒むような会社は要注意です。資材や道具が雑然と置かれていたり、見学すると、手を休めたりする職人がいるのはいただけません。手を休める職人は白信のない証拠です。すでに入居している人からは、住み心地やアフターサービスの対応ぶりなどを聞くことができます。近所の人から工事や会社の評判を聞くのもよいでしょう。
工務店の信頼度は、自治体の建設業課や国土交通省の出先機関で「建設業許可申請書」を閲覧することで、工事経歴や専任技術者の数、経営状況などをチェックできます。また、自治体の建設業を指導する係で「建設業監督処分簿」を閲覧すれば、過去の営業停止歴や工務店に対する苦情やトラブルを知ることができます。(一財)建設業情報管理センターのホームページ(http://www,ciic.or.jp/)「経営事項審査結果の公表」で工務店を検索して見れば、経営状況や工事高などによる総合評定がわかります。
住宅品質確保促進法が施行され、小さな工務店であっても住宅の引渡しから10年間は、補修や賠償をすることが義務付けられています。しかし、その問に工務店が倒産すると補償を受けるのが困難になってしまいます。そこで、平成21年に施行されたのが「住宅瑕疵担保履行法」です。この法律によって、新築住宅の売主には、瑕疵担保責任を履行するための保証金供託または保険加入が義務付けられました。
つまり、工務店などの売主が倒産しても、保険会社などから補償金をもらうことができるようになったのです。また、住宅金融支援機構の融資を使う使わないにかかわらず、|司機構の融資条件を満たした物件ならば最低限の性能が確保されています。さらに住宅品質確保法の住宅性能表示制度による「設計住宅性能評価書」や「建設住宅性能評価書」が付いていればもっと安心です。
契約書の内容は事前に確認し押印は必ず自分で行いましょう。重要事項説明に納得したら、いよいよ売買契約を結びます。契約書は契約締結日よりも前に入手しておき、不明点や疑問点は、はっきりさせておきましょう。いざ、契約を交わす段階になると、契約書のさまざまな箇所に押印を求められます。印鑑はそれぞれの意味を理解してから押すようにしましょう。署名押印を求められた時は、必ず自分で行い、業者には印鑑を渡してはいけません。
マイホームの売買契約は、本人が出向くのが原則です。どうしても本人が出向けない場合や、共有名義の契約で、共有名義者どちらか一方が同席できないという場合は、委任状を用意します。委任状には本人の実印が必要なので、印鑑証明書の印影と一致するか、必ず確認してください。
重要事項説明書をじっくり検討してから契約をしましょう。購入したいマンションが決まったら、申し込みと10万円程度の申込証拠金を支払います。正式な売買契約の前に以下のような内容の重要事項の説明が法律で義務付けられています。
・敷地に関する事項
・共用部分に関する事項
・専有使用権に関する事項
・管理費や修繕積立金に関する事項
重要事項の説明は契約の直前?1週間前に行われることが多いですが、中には説明直後に契約を求める業者も存在します。重要事項の説明は専門的な内容が多く、すぐに理解できるものではありません。必ず内容を検討する時間を取り、十分に納得してから捺印します。契約し、手付金を払うと後戻りできません。慎重に進めましょう。
重要事項説明書は、じっくりと落ち着いて内容を検討することをおすすめします。重要事項説明と同じ日に「契約する方印鑑と手付金を持ってくるように」と言われたら、「事前に重要事項説明書がほしい」旨を伝えましょう。「重要事項説明書が未完成で渡せない」ということなら、「では契約は日を改めて」と返答し、説明書を受け取ったその日に契約するのは、避けるようにしましょう。
最低限の知識を持って、不明点を明確にしておくことが重要です。マイホームの取得には、多くの法律が関わってきます。法律は専門的なものなので「分かりにくい、面倒くさい」と敬遠されがちですが、たくさんの法律が関わるということは、その分「買主の権利」がきちんと保護されているということでもあります。契約書を交わす際には、相手に任せっぱなしにするのはいけませんが、逆にだまされないようにと必要以上に気負う必要もありません。最低限の知識を身につけておき、法律を味方につけるくらいのゆったりとした心構えで望むことがベストでしょう。
すべての契約に言えることですが、契約を結ぶ前はくれぐれも慎重に判断しましょう。不明点があるのであれば、持ち帰って誰かに相談をしてもかまいません。契約を急がせる業者は、事情があって売り急いでいる可能性があるので、一度ゆっくりと考える時間を確保するようにしましょう。
◆口約束はせずに、どんな些細なことでも必ず書面にする。
◆契約書などの書類は、締結日前に用意してもらい、事前に目を通すようにする。
◆契約の前に疑問を残しておかない。疑問がある場合は、その場で契約はせず家に持ち帰る。
◆印鑑は安易に押さない。押印する場合は、何故押印が必要なのか目的を確認し、納得してから押す。
◆登記記録は自分の目で確かめる。
◆契約を解除する方法を確認しておく。
「重要事項の説明」は、買主が売買契約の最終意思決定をするにあたって、重大な影響を与えることがらの説明を義務付けたものです。現在の状況だけでなく、将来に影響することも説明が必要です。「重要事項説明書」を前に、宅地建物取引士の有資格者が口頭で内容を説明します。説明前に資格証の提出が義務付けられているので、確認をしてください。
書類は説明当日より前にできているはずですから、事前にコピーしたものを、郵送やFAXで送ってもらいましょう。不動産に詳しい知人などにチェックしてもらうのもよいですし、自分自身でも重要事項説明書を読んで、不明点をメモしておきます。買主が理解できたか確かめながら丁寧に説明してくれる人もいますが、重要事項説明書に書かれた内容を読み上げるだけの人もいます。ある程度の予習が必要不可欠です。
最後までしっかりと
重要事項の説明は、1時間以上の長時間にわたることもあります。事前にメモしていた疑問点のほかに、不明点は全てクリアにする心構えで望んでください。不明点や引っかかりは遠慮なく質問して構いません。複雑な専門用語の羅列で疲れたりすることも多いのですが、自分の住まいに関わることです。しっかり最後まで聞きましょう。
その場でのサインは必須ではない
重要事項説明がひと通り終わると「説明を受けました」というサインをします。サインは、買主が説明をすべて了解し承認したものとみなされます。説明を受けたからといって、内容がよく分からないまま、サインをするのは絶対にやめましょう。重要事項説明の内容に疑問が残るようだったら、納得いくまで質問し、その場で解決しなければ、日を改めるぐらいん心持ちが必要です。
契約日当日になって慌てることのないよう、あらかじめ用意をしておきましょう。
実印
共有名義にする場合にはそれぞれの実印が必要になります。
印鑑証明書
共有名義にする場合にはそれぞれの印鑑証明書が必要になります。
手付金
売買契約を正式に締結する際に支払う証拠金です。金額は当事者双方の話し合いで決定しますが、売買代金の1割程度が一般的な金額になります。売主が宅建業者(不動産業者)の場合は、売買代金の2割が上限額になります。
委任状、収入印紙、または収入印紙代
収入印紙は、契約書を作成するときに、金額に応じた額面の印紙を貼って消印する
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