
建築家・設計事務所の仕事は、綿密な打ち合わせを重ねて、施主の望む家のイメージを具体的なプランにすることです。建築家と上手に付き合うことで建築家のやる気を引き出し、理想の家を実現しましょう。
【目次】
大手から零細まで、規模はさまざま。仕事内容もマンションから戸建て住宅まで色々です。住宅の設計を頼むにはどこがいいか、考えてみましょう。ここでは規模の大小で考えることが大切です。建設業には大手ゼネコンから個人事業主の大工さんまであって、それぞれ得意とする分野があります。大きな会社は組織力や資金力を使って、大規模な事業を手がけることができますが、半面、小回りは利きづらいのものです。個人営業では必然的に規模的に小さな仕事しか請け負えませんが、仕事をしている人の「顔」が見えるという面があります。同じように設計事務所にもいくつかのタイプがあり、それぞれの得意分野があるのです。
◆全国大手
国、官公庁や大手企業の大型施設を主に設計・監理している設計事務所。建築士などが数十名ほど在籍していて、それぞれ専門分野で仕事を進めている。各地に支店や支社がある。一般的な住宅の設計・監理はほとんどやらない。協力事務所をたくさんもっている。
◆地場大手
官公庁や地場企業の大型施設を主に設計・監理している設計事務所。建築士などが10~20名ほど在籍していて、チーム制をとっているところが多い。一般の住宅の設計監理はめったにやらない。協力事務所をたくさんもっている。
◆地場中堅
官公庁や民間の施設を主に設計・監理している。建築士などが数名~15名在籍していて、チーム制をとっているところが多い。一般の住宅の設計・監理をすることもある。協力事務所をもっている。
◆小規模
官公庁や民間の施設を主に設計・監理している。建築士などが複数名ほど在籍していて、主宰者が設計に目を通すことが多い。グループや組合などをつくり、同人的に活動をしていて、大型物件に対応できるところもある。上記の全国大手、地場大手、地場中堅から独立してやっている人も多い。住宅の設計・監理をやっているところがほとんどで、中には住宅専門というところもある。マンションの一戸、ビルの一部、自宅続きの建物に事務所を構えているケースが多い。
◆零細
ひとり、もしくは夫婦で民間の施設や一般住宅をやっている。自宅の一室、自宅続きの建物、マンションの痴戸にあることが多い。
建売住宅ではなく、注文住宅を建てようとするとき、まず工務店やハウスメーカーに話を聞いてみるという人が多いのではないでしょうか。この場合、話を聞きにいった工務店やハウスメーカーに関わりのある建築設計事務所を紹介され、そこで設計・監理を行うのが一般的な流れです。大規模な工務店やハウスメーカーでは、社内の設計部が設計をするケースも多いようです。ですが、注文住宅を建てる初期の段階で、直接、設計事務所に話を聞くことも可能なのです。この場合、個人の施主の相手になってくれるのが、「小規模」「零細」にあたる規模の設計事務所ということになります。それより大きな規模の設計事務所は、基本的には一般の注文住宅の設計や管理は行いません。自分たちの好みやライフスタイルに合わせてじっくりプランを練りたいという方、個性的で人とは違う家に住みたいと思う方は、工務店やハウスメーカーに依頼せず、自分で設計事務所を選ぶことをお勧めします。
個性的な住宅の実現が可能な建築家・建築事務所とのつき合いでは、相性が大事です。作風や考え方もさまざまなので、自分の考えや好みに合った人を選ぶことがとても大切です。設計作業は建て主とコミュニケーションをはかりながら進めていく作業ですから、いくら建築家のアイディアやデザインがよくても、取り組み姿勢に疑問を感じたり、印象と違ったりした場合は、別の建築家・設計事務所を探しましょう。まずは、話した感じや要望に対する誠意、これまでの作品などを通して、お互いに意見をいいやすいかどうかをじっくり判断しましょう。
「建築家・設計事務所に家づくりを頼むと、デザインが奇抜になるのでは?」という不安や心配がよく聞かれます。もちろん、建築家の個性はさまざまで、デザインや色使いなどに、個人の考え方やポリシーが強く影響してきます。ですが、 本来建築家が目指すオリジナリティとは、 快適な家づくりをするために、狭い空間を広く見せる、効果的に光を取り入れるといった工夫やアイディアを最大限取り入れた 結果が生まれるものです。提案されたプランに納得がいかなければ、どこが気に入らないのかをきちんと伝えることも重要です。
建築家・設計事務所に依頼するいちばんのメリットは、自分たちの要望に合わせて比較的自由に設計してもらえる点と言えるでしょう。また、工法、使用材料、設備などもハウスメーカーのように一定の規格が決まっているわけではないので、選択の自由度が非常に高くなります。ノンブランド品でも質のよいものを取り入れて、ローコストながらセンスのよい住まいを提案してくれるかもしれません。そのかわり、工法や構造もゼロからのスタートになるため、設計期間は6ヵ月~1年と長めに覚悟しておきましょう。依頼する際には、設計契約後の変更、中止は契約違反がない限り、それまでに発生した作業についての費用は建て主の負担に なるということを頭に入れておきましょう。こういったトラブルを防ぐためにも、契約前 にプランの内容や費用の見積もり、支払い回数、委託業務内容などは書面上でもしっかりと確認しておきましょう。打ち合わせで のやりとりをこまめにメモに残しておくこ とも大切です。
建築家・設計事務所は、柔軟性が高い点の大きな特徴です。小敷地や変形敷地など敷地条件がイレギュラーになると、ハウスメーカーやパワービルダーなどからは対応が艱しいといわれることがあります。しかし、建築家に頼めば、できる限りの対応策を考えてくれるので、プラン面でもコスト面でも納得いくようになるといわれます。
一般的に建築家・設計事務所に依頼すると設計料が余分にかかり、高くなるはずだと思っている方が多いようですが、トータルコストで考えると、かえって安くなることもよくあります。これは、ひとつには間取りの取り方や部材の使い方でコストを下げられることもあるのです。もうひとつは施工先を決める場合、数社に見積もりを依頼する競争入札制を取っているため、競争原理が働き、見積もりの透明性が生まれることなどが理由です。あらかじめ予算に限りがある場合は、前もって希望を伝えるようにしましょう。
建築家・設計事務所との家づくりの場合、設計は建築 家が行い、施工は別途、工事請負契約を結んだ施工会社が行います。設計と施工は 別々の契約で、完全に分離しているわけです。施工会社は、建て主自身が直接指定することも可能ですが、多くは建築家が手配してくれるのです。設計が決まったら、実際の工事に入りますが、建築家・設計事務所に設計を依頼した場合は、引き続き施工監理業務も依頼するのが一般的です。これは建築家の重要な業務のひとつでもあります。施工監理とは、実際の工事にあたる業者を監理する仕事で、施工側ではなく建て主側の視点から、適正な工事が行われているか、スケジュール通りに進んでいるかなどをチェックする仕事です。仮に 工事途中で変更などが生じた場合、監理者 は全体的な流れのなかでもっとも効率のよ い方法を現場に指示してくれるうえ、全体的なコスト管理もしてくれます。また、トラブルが起きた場合も、施主の代理として監理者が処理してくれます。 昨今問題とされている欠陥住宅の原因は、 手抜き工事や施工者の知識不足から起こる ことが多いもの。適切な工事監理をする事 でそのようなトラブルも防げるのです。
建築家・設計事務所に頼んだ場合の設計費用は、一般的に工事費の10~20%程度といわれますが、この金額を高いと見るかも簡単に決めつけられない問題なのです。たとえば設計と施工を一括で依頼するハウスメーカーや工務店などの場合、一見、設計料や監理料はかからないように思われますが、工務店の場合設計料は工事費に含めていることが多く、ハウスメーカーは営業経費なども含まれる場合がほとんどです。この場合監理料も同様に発生していると考えられるため、一概に建築家・設計事務所に払う費用が高いとはいい切れないのです。設計料の支払いは複数回に分けて行うのが普通ですが、回数は必ずしも統一されていません。一般的には、基本設計に着手する時と実施設計が終わった時の2回(設計料)、建物完成時(監理料)の計3回程度が目安となっています。
建築家・設計事務所と家づくりをする最大のメリットは、建主の要望や好みに応じた家です。または、一から設計できることです。デザインや住宅の機能にこだわりのある方はもちろん、変形敷地や狭小敷地など、難しい条件に悩む方にもおすすめです。建築のプロならではの斬新なアイディアとノウハウを駆使して、限られた条件のなかで最良のプランを提示してくれます。
建築家・設計事務所によって個性や得意分野はさまざまですが、建築家・設計事務所と上手に付き合うためには、第一に、自分とセンスや価値観が似た建築家を探すことが重要です。家のプランは、建主と建築家の二人三脚で練り上げていくものです。好みのテイストか似通い、価値観を共有できる人のほうが、お互いが胸を開いて話し合うことができるでしょう。
建築家・設計事務所を探すためには、まず情報収集から始めましょう。住宅情報誌やインターネットなどを見て、好みに合った家を設計した建築家・設計事務所を調べたり、建築家本人のインタビュー記事を読むのも参考になります。気になる建築家を見つけたら、積極的に連絡をとって、設計事務所を訪ねてみます。建築家本人と会って話をすることで、その人となりや、価値観などが感じとれるはずです。そのうえで、自分の要望を率直に話せそうな人かを判断しましよう。
家づくりを頼む建築家・設計事務所を決定したら、家作りに対する家族の要望を、率直に伝えていくことがとても大切です。「ちょつと無理かな」と思うようなワガママな相談も、まずは話してみましよう。いくつも要望を挙げていき、そのなかで優先順位を付けてくることで、おのずと理想の家の形が具体的に見えてきます。
また、建築家・設計事務所は、未来の家族の姿を考慮して家を設計します。ときには、家への要望をめぐって、家族のなかで意見が分かれるかもしれません。そのときにも、建築家か第三者の立場で意見を調整してくれることがあります。
建築家・設計事務所のやる気を引き出すためには、家づくりにかける熱意や情熱を共有することがとても大切です。頼りになりそうな建築家だからといって、「あなたに、全部お任せします」と丸投げするだけでは、建築家の意欲は湧きません。「こんな家にしたい」という強い要望をぶつけてこそ、相手のやる気を引き出すことになるのです。要望をしっかりと伝えたあとは、建築家を信頼することも必要です。
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