

マンションを購入する際、見落とされがちでありながら、将来的に大きな負担となるのが「機械式駐車場の修繕費」です。見た目には便利で整然とした印象を与える機械式駐車場ですが、実は長期的な維持費・修繕費という観点では“金食い虫ともいえる存在なのです。特に昨今では、部品の供給問題や専門業者の人手不足、そして円安や資材価格高騰といった要因も加わり、修繕費が跳ね上がる傾向が強まっています。この記事では、今後マンション購入や管理を考える方に向けて、機械式駐車場の修繕リスクをわかりやすく解説し、その背景と実態に迫っていきます。

かつて都市型マンションでは、土地の有効活用や駐車台数の確保を理由に機械式駐車場の導入が当たり前のように行われてきました。特に2000年代以降に建設された中高層マンションの多くでは、立体的に車を収納できる機械式の採用が主流となり、マンションの付加価値としても評価されていた面があります。しかしその一方で、稼働から10年、15年と経過するにつれて、駆動装置や制御盤といった機械部品の老朽化が進行し、メンテナンスの回数やコストが大幅に増加するという現実が浮かび上がってきました。
実際に、機械式駐車場を導入しているマンション管理組合の多くが、築10年を超えたあたりから「想定外の修繕費が発生して予算が足りない」「メーカーから部品の製造中止を告げられ、設備全体の更新を迫られた」などの悩みを抱えるようになっています。特にここ数年は、新型コロナやウクライナ情勢による物流の混乱、さらに急激な円安の影響で、部品や装置の価格が1.5〜2倍以上に跳ね上がるケースも少なくありません。もはや修繕費の高騰は、単なる一時的な問題ではなく、構造的なリスクとして捉える必要がある段階に来ているのです。
機械式駐車場が他の設備と大きく異なるのは、構造そのものがメーカーに依存しているという点です。エレベーターや給排水設備であれば、複数のメーカーがメンテナンスに対応可能であり、部品の互換性も一定程度確保されています。しかし機械式駐車場は、設計から構造、制御システムまですべてが専用設計となっているため、製造元のメーカーしか保守・修繕ができない、いわば「囲い込み」状態にあるのが実態です。
そのため、万が一メーカーが倒産したり、設備の製造を中止したりした場合、たちまち修繕不能という危機に直面することになります。例えば、20年前に設置された古いモデルでは、すでに制御基板やセンサーなどの専用部品が生産中止となっており、交換が不可能なケースも多く見られます。このような場合、わずかな故障であっても、部品交換ではなく設備全体の入れ替えを余儀なくされ、数千万円規模の大規模工事が必要になるのです。
さらに深刻なのが、メーカー側がメンテナンス契約を独占的に保持していることによる価格の不透明さです。競合が存在しないため、見積金額の妥当性を判断するのが難しく、管理組合としては言われるがままに高額な修繕費を支払わざるを得ないというジレンマを抱えています。これが、結果として長期修繕計画を圧迫し、積立金の不足や管理費の値上げというかたちで居住者に跳ね返ってくるのです。
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機械式駐車場の修繕費高騰が問題なのは、単に管理組合の財政に負担を与えるだけではありません。その影響は、最終的にマンションの居住者全体の暮らしに波及することになります。たとえば、定期的な点検や部品交換のために想定以上の費用がかかるようになれば、長期修繕計画全体の見直しが必要となり、他の共有部分のメンテナンス費用を削る、あるいは修繕積立金の値上げという対応を迫られることになります。
実際、多くの管理組合では、駐車場設備の修繕費に年間数百万円を計上しており、築20年以上のマンションでは「駐車場のせいで修繕積立金が足りない」という事例が増えています。これにより、将来的に外壁塗装や屋上防水といった建物本体のメンテナンスが後回しにされ、結果として建物全体の資産価値が下がるリスクすらあるのです。
また、機械式駐車場の稼働率が年々低下している現状も見逃せません。近年では、カーシェアやコンパクトカーの普及、さらには高齢化により車を手放す世帯が増えたことで、駐車区画の空きが目立つようになっています。にもかかわらず、空いている駐車区画の保守管理にも一定のコストがかかるため、利用者が減っているにもかかわらずコストだけが増えていくという悪循環が生まれているのです。
このような背景から、近年では機械式駐車場の将来的な「撤去」や「平面化」を視野に入れる管理組合も増えてきました。特に稼働率が50%未満となっている物件では、維持費よりも撤去・更地化して他用途に活用する方が合理的であるという判断がなされるケースもあります。撤去工事には数百万円単位の費用がかかるものの、その後の維持管理コストがほぼゼロになることを考えれば、長期的には収支改善に大きく貢献します。
一部のマンションでは、撤去後のスペースを駐輪場や来客用スペース、あるいは植栽の整備に転用することで、生活環境の改善にもつなげている事例も見られます。もちろん、こうした変更には区分所有者の多数決や管理規約の変更といった手続きが必要ですが、将来的なコストと利便性のバランスを考えたとき、決して非現実的な選択ではありません。
ただし、撤去や平面化を検討する際には、建築基準法や容積率の規定を確認しなければなりません。機械式駐車場が建築確認の対象となっている場合、撤去することで建物全体の法的な構造が変わる可能性があるからです。そのため、設計事務所や管理会社、弁護士などの専門家と連携しながら慎重に進める必要があります。
最後に、これからマンションを購入しようと考えている方に向けて、機械式駐車場のリスクを最小限に抑えるためのアドバイスをお伝えします。まず注目すべきは、管理組合が作成している「長期修繕計画書」です。そこに駐車場設備に関する具体的な修繕予定と費用が記載されているか、またその見積もりが現実的な水準かどうかを確認することが重要です。加えて、直近の総会議事録や修繕履歴にも目を通し、これまでどのような対応がなされてきたかを把握しておきましょう。
また、駐車場の稼働率や空き区画の数も要チェックです。稼働率が低いにもかかわらず機械式駐車場を維持している場合、近い将来コストの見直しが必要になる可能性があります。販売会社や仲介業者は、このようなリスクについて積極的には説明しないことが多いため、購入者自身が主体的に情報収集する姿勢が求められます。
仮にすでに所有しているマンションに機械式駐車場がある場合でも、管理組合に対して適切な修繕計画の策定を働きかけたり、撤去や代替案の検討を提案したりすることで、将来的な財政リスクを抑えることが可能です。マンションは購入した後が本当のスタート。だからこそ、設備の構造とコストについての正しい理解を持つことが、安心して住み続ける第一歩になるのです。
機械式駐車場は、その利便性の裏側で見過ごせないコスト構造を抱えています。時代の変化とともに、これまで当たり前だった設備の価値が見直される今こそ、住まいの本質を問い直すチャンスです。マンション購入を検討している皆さんには、ぜひ「便利そう」ではなく「将来も安心できるかどうか」の視点で、住まいを選んでいただきたいと思います。
• 機械式駐車場実態調査(マンション管理業協会)
• 安全に関する情報 |(公社)立体駐車場工業会のホームページ
• マンション総合調査(国土交通省)
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