あなたの夢の注文住宅のイメージがすこしずつ姿を現してきました。いよいよ引渡です。しかし、いかに美しいディテールにもとづいたデザインをしてもすべては施工現場で決まるのです。いくら立派な図面を書いても、現場がそれを実現できなければ、全く意味がないのです。たくさんの職人たちの技と心意気が現実のカタチをつくりあげるからです。ですから、現場に足を運ぶことは非常に大切なことです。
【目次】
間取りプランニングの打ち合わせが終わり、見積もりの確認も済み、施工業者も決まり、さあ、いよいよ現場がスタートします。しかし、ここでホッと安心していてはいけません。新しい家の施工過程では、思いもよらない問題が起こるものです。
注文住宅の工事現場では、あなたにとってはじめてのことばかりでつい専門家にたよりがちです。しかし、将来そこに住まう本人が、傍観者になっているようではいけません。それでは、本当に望む住まいは実現しません。可能な限り実際に現場へ足を運び、自分自身の目で家ができあがる過程を確かめたいものです。そのためにも、まずは工事工程のおおまかな流れを知ることが重要です。まずは工事現場の流れをご説明いたします。
家を建てる土地は、既存の建物や障害物などがない、平らな地面でなければいけません。敷地をこうした状態に整えることを更地にするといいます。新しい敷地に家を建てる場合は、この作業はすでにすんでいるはずです。問題は『建替え』の場合でしょう。当然ですが、以前からある古い家を壊す解体工事が必要となります。この解体工事は、建て主と解体業者との事前の打ち合わせが非常に重要です。特に残しておきたいものや、新しい家でそのまま使いたいものがある場合は、一時保管場所を確保やそのほかの処置をする必要があります。。家を建てる業者と解体業者が別のケースなどは、お互いの作業工程の調整に注意を払いましょう。また、最近では建築リサイクル法による分別解体・再資源化が義務づけられているので注意が必要です。
『建替え』では工事中の仮住まいの場所を探したり、引越しも工事の前と後の2回必要になります。仮住まいで使うものと、新しい家に引っ越してから開けるものを分けるなど、荷造りや工程の調整が重要となります。
注文住宅を建てる前に、まず工事が無事完了することを願って、神主に敷地のお祓い、すなわち「地鎮祭」を行いましょう。「地鎮祭」は建て主はもちろん、設計者や施工者など工事関係者一同もいっしょに参加し行われます。こうした行事は午前中が多いので、午後に建物の位置や大きさ、高さの基準を確認するための工程である地縄張り。水盛り・遣り方を行宇野が一般的です。建て主も立ち会ったほうがよい作業なので、三者が集まるこのときを利用すれば1回で済むので効率的です。その際、あわせて近隣への挨拶もしておくことがベストです。
「地鎮祭」が終わると、注文住宅を建てる部分の地盤を強固なものにする作業に入ります。基礎がのる部分の上を掘削して、大きな石(割栗石)を敷き並べ、地盤を突き固める割栗地業などを行います。また地盤の状況によっては、杭を打つこともあります。その後、いよいよ建物本体の工事です。家が沈んだり、傾かないようにするためには、建物の重みを偏りなく直接地盤に伝える役割が基礎工事です。基礎は、直接地面に接しているので湿度の高い環境にさらされ、かつ強度が要求されるので、木造の住宅でも鉄筋コンクリートで作られます。
この基礎の上に建物の構造部分をつくるのが躯体工事です。このお躯体工事部分がその住宅により、内容や工期に一番ちがいがでる部分ですが、躯体を木で構成するのか、鉄で構成するのか、コンクリートで構成するのか、木造輻組構法やツーバイフォーエ法、鉄筋コンクリート造、鉄骨造など、建物は目的や予算にあわせて、さまざまな材料や工法でつくられるからです。
注文住宅で多く用いられる木造の現場では、家の骨組をつくる建て方からはじまります。主に大工が手がける工程となります。あらかた屋根まで組上がれば、上棟式を行って工事の無事を祈り、関係者をねぎらいます。骨組ができたら、次は下地工事に進みます。この工程は最終的には見えなくなる部分ですが、この工事の問に電気や給排水などの配線・配管工事が入ります。また、必要に応じて役所や金融機関の中間検査や公庫の現場審査などもあります。最後は室内や外部の仕上げ工事で、住む上で私たちが最もよく目にする部分です。各部屋の趣きや建物の外観を決定する重要な工程です。実はこの工程が職人の数が一番多い部分で、その調整は現場責任者である現場監督の重要な仕事となります。
建物が完成したら、最後に役所の完了検査とは別に、工事がきちんと行われているかのチェックをします。これを竣工検査といいますが、この検杳には建て主も立ち会います。竣工検査を受けて必要な手直しをすることをダメ工事といいます。これは依頼したハウスメーカーや工務店が主導で行ってくれるはずです。これで現場の工事は完了し、ハウスメーカーや工務店などの施工者からカギを受け取って、建物の引き渡しの手続きをします。実はここではじめてその家が建て主のものになるのです。それまではあくまでも、施工者の管理下におかれます。
注文住宅が完成してしまうと、非常に忙しくなります。ご近所への挨拶、役所や学校への届出、ガス・水道・電気などの手配、インターネットの切り替え、転居届など、引越しまでの間にしておくことは山ほどあります。目の回る忙しさです。荷造りばかりに気持ちと時間をとられて、引っ越し当日にあわてることがないように、できることからすませておきましょう。そのためにも、現場の状況を把握しておくことは非常に重要です。引越しの雑用に気をとられて、肝心の現場を忘れないようにしましょう。
家の本体工事にお金をかけすぎて、外構工事は予算の都合上後回しになりがちですが、家の工事といっしょに進められば施工上のムダが少なくなり、全体のコストダウンにつながります。特に庭に木や花を植えようと思っても、その舌に配管や配線がとおっていたりすると大変です。仮に外構の施工は後回しにしても、全体のプランニングだけでも同時に考えておいたほうが無難でしょう。
注文住宅の着工から完成までにかかる期間は、採用する工法や材質、工事の規模・業者など、さまざまな条件によって大きく異なります。一般的に多く用いられる木造軸組工法では、4~7ヵ月程度が目安となります。
昔の家づくりは、工期に無理のないよう家づくりが主流でした。材料は、秋から冬にかけて近くの山で伐採し、壁は春から秋にかけて塗るなど「切り旬」「塗り旬」がありました。木材の乾燥なども十分な時間をとって乾燥させていました。ぬりかべなどもそうです。しかし、現代ではそんな悠長なことをいってはいられないのが現実です。ですが、せっかく建てた家を無理なく長持ちさせるためには、大切なことです。工期は短く短くすれば現場経費が抑えられるので、短くしがちですが、何十年と長く住み続けていく家を建てるのですから、1~2ヵ月を惜しんで、あとで後悔するようなことがあってはいけません。特に木造住宅や湿式工程の多い注文住宅は気をつけたいものです。それぞれの現場における適切な工期で進めたいものです。
竣工検査とは、厳密に言えば、施工者側の自主検査、建築設計事務所の監理者検査、そして建築主検査と3回あるのが正常な形であるといえます。建築設計事務所が、建築主が選任した監理者であるなら、3回の検査のうち、2回の検査が、建築主であるあなたの側に立った検査ということになります。建築設計事務所がいないばあい、もしくは建築設計事務所が施工業者の選任によるものである場合は、建築主検査だけが、あなたに許された唯一の検査になります。施工業者に選任された建築設計事務所の検査は、業者の検査よりも甘いものになるのが普通です。この場合、建築主検査が非常に重要なものになってくることは、お分かりいただけるでしょう。
2019.8.29 加筆
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